館長ノート

安らかにお眠りください、ジョン

ジョン・オルソンが11月25日に97歳で亡くなりました。こう書いても誰のことかわかる人はほとんどいないでしょう。

いま「アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」を開催しています。アンドリュー・ワイエスが30年にわたって描き続けた、オルソン・ハウスとそこに住むクリスティーナとアルヴァロのオルソン姉弟。丸沼芸術の森が所蔵する「オルソン・シリーズ」の水彩や鉛筆素描、テンペラなど120点が展示されています。

亡くなったジョン・ウィリアム・オルソン(1922‐2019)は、クリスティーナとアルヴァロの下のサミュエルの子で、オルソン・ハウスで生まれた最後のオルソン家の人でした。2010年にオルソン・ハウスを訪れたとき、ジョンにハグしたことを思い出します。私の顔が触れたのはジョンの胸で、それくらい背の高い人でした。ワイエスの絵に描かれたアルヴァロにそっくりだったので思わずハグしたくなった、と記憶しています。

オルソン・ハウスのあるメイン州の旗には、松の木とヘラジカを挟んで農夫と船乗りが描かれています。オルソン家の先祖も代々船長が続き、船を下りると農業や特産のロブスター漁をしていました。クリスティーナたちの父親は、ヨハン・オラウソンというスウェーデン人の船乗りです。ある冬、早く川が凍って船が閉じ込められ、のちにオルソン・ハウスと呼ばれる家に滞在します。家の娘のケイティと恋に落ちたヨハンは、ケイティの父親が亡くなった知らせを受けるとすぐに船を下りて結婚、名前もアメリカ風にジョン・オルソンと変えます。「オルソン・ハウス」の誕生です。

ジョン・ウィリアム・オルソンも、12歳から亡くなるまでロブスター漁をしていたそうです。第二次大戦中、駆逐艦や空母に乗って大西洋や太平洋に出航していた時期を除いてですが。これは海軍の経歴ですが、オルソン家の先祖と同じように船と海に関わる生活を生涯続けた人と感じられます。
ジョンはオルソン・ハウスの近くのオルソン家の墓所に埋葬される予定と報道にありました。この墓所には、クリスティーナとアルヴァロはもちろん、アンドリュー・ワイエスも眠っています。

追記:12月4日に埋葬されたとのことです。20センチほど雪が積もっていたそうで、クリスティーナの葬式のときにワイエスが描いた作品に重なります。

 

参考:https://knox.villagesoup.com/p/john-w-olson/1843272

企画展「丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」展覧会情報はこちら

ジョン・ウィリアム・オルソン 撮影:中村音代