新潟市美術館ブログ

「フルクサスを知ることは、体験すること」

  企画展「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」の関連イベントとして、9月22日(土)にフルクサスのパフォーマンス・イベント「バス観光ハプニングin 新潟 2012」を行いました。このイベントは、1966年に靉嘔さんが日本で初めて行ったフルクサスのパフォーマンスをもとに、約10年ぶりに、日本海側では初めて行われるという貴重なものでした。
 参加者は5歳の女の子から80代のご婦人まで20名、出演者、スタッフ含め34名でのバスツアーとなりました。「ハプニング」なので、事前に行き先を詳しくは告げず、あとは行ってからのお楽しみということで参加してもらいました。
 

 集合場所である【新潟市美術館】で最初のパフォーマンス《2インチ》が行われ、テープカットとともにツアーのスタートが切られると、バスに乗り込み美術館からほど近い第一目的地【正福寺】へ移動。お彼岸でお参りする人々で賑わう中、《お寺の鐘》 を一撞きすると、景気付けになりました。その後、皆で一列になってすり足で移動する《シャッフル》を演じながら、お寺をあとにしました。前の人につかまりながらすり足で駐車場までの800メートルを移動するのはかなりの運動でしたが、参加者の皆さんの表情が一気にやわらかくなったパフォーマンスでした。
 一路北へと走るバスの車中でもパフォーマンスが行われました。第二の目的地【笹川流れ】に到着するとすぐにお昼ご飯でしたが、ここでもパフォーマンスは続きます。ダニエル・スポエリの有名な《ランチ・ピース》を再現するため、参加者も自分たちの食べたランチ・ボックス(昼食は笹川流れのお塩を使った「塩むすびセット」でした!)をめいめいに持ち帰りました。その後、近くの【宝屋浜】に移動し、11の作品を演じました。オノ・ヨーコさんの《フライ・ピース》では、砂浜にあるいくつもの小さな岩を使って参加者全員で飛びましたが、こんなに大勢の人で一度に飛んだ同作品は初めてかも知れません。他の作品も、場所の特性を活かして岩場を使った演技が多く見られましたが、晴天に恵まれたこの日、青い海と広い空のもとでのパフォーマンスはとても美しく映えていました。
 最後の目的地は胎内にある【乙宝寺】です。ここでも場所の特性を存分に活かし、7つの作品を行いました。まずは、水を滴らせて音楽を奏でる《ドリップ・ミュージック》。空海が突いて湧き出たという逸話のある湧水を汲んで、皆で一斉に演奏しました。そして、本堂の回りでは、左右に分かれて進み出会った人と握手するディック・ヒギンズの《Hello, Handshake Piece》を、釈迦の左目を納めているといわれる同寺院と左目を失ったマチューナスを重ねて、フルクサスの代表的作品である《アドリアーノ・オリベッティを悼んで》を演じました。《ナムジュン・パイクの安息に捧げるテレビ・キャンドル》は海岸とお寺の2か所で行いましたが、仏陀の前に置かれたTVキャンドルはパイクの《TV仏陀》をも彷彿させ、より印象的でした。
 そして、【新潟市美術館】に戻った後、オノ・ヨーコの《カット・ピース》ならぬ、《靉嘔の断髪式》を含む3作品を行い、すべてのプログラムは終了となりました。長時間にわたるツアーでしたが、子どもたちを含め、参加者の皆さんは疲れた顔も見せず、楽しんでくださったようです。そして、いずれのパフォーマンスも、パフォーマーだけでなく参加者にもそれぞれの役割を演じていただき、全員でつくりあげたイベントとなりました。

 同イベントの記録映像は会期終了まで「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」展の会場内で上映中です。イベントに参加できなかった方は、ぜひこの機会に映像で追体験してください。

バス観光ハプニング2012演目(和文)

バス観光ハプニング2012演目(欧文) 

追伸:
このイベントでなによりも驚いたのは、帰りのバスでの出来事です。美術館に向かうバスの中から、なんと虹が見えたのです!その虹は、ついにはヨーゼフ・ボイスのバラの作品《Chief》が飾られたバスの正面ガラスに現れ、本イベントに花を添えてくれました。さすが靉嘔さん、なにか「持っている」ようです。

アリソン・ノールズの《シャッフル》で大移動
靉嘔《シャーロッテ・モアマンとエミリー・ハーヴェイに捧げる》 ハンギング・ピース
ジョージ・マチューナス《アドリアーノ・オリベッティを悼んで》
《ナムジュン・パイクの安息に捧げるテレビ・キャンドル》