館長ノート

美術と音楽 ルドン展コンサート

開催中の「オディロン・ルドン」展、関連催事もいろいろご用意しています。去る11月24日には多摩美術大学教授本江邦夫さんの講演会が開かれました。19世紀の哲学や文学の動向を踏まえ,象徴主義の大きな流れの中にルドンの芸術を位置づけようというもので、明確な歴史観に裏打ちされた大変刺激的なものでした。熱心な聴衆の方々、とても満足されていたようです。本江先生、ありがとうございました。

さて、次は12月7日。ピアニスト鶴園紫磯子(つるぞのしきこ)さんによるトーク&コンサートです。「ルドンの夢をたどって~画家が愛した音楽」と題し、ルドンと音楽の関係を探ろうというもの。ベテランのピアニストですが、音楽におけるジャポニスムの研究でもよく知られた方です。

ところで日本経済新聞の文化欄はなかなか個性的でファンが多いそうです。特に「美の十選」はさまざまな書き手が登場し、美術作品を意外な切り口で取り上げるという人気の短期連載コラムです。かく言う私も、10年以上前に執筆させて頂いたことがあります。今年の3月その「美の十選」に思いがけず懐かしい方が、書いていらっしゃるのを発見しました。「音楽が生まれる情景十選」と題し、19世紀ヨーロッパの音楽家が描いた絵、画家が音楽家の肖像や音楽会にまつわる情景などを描いた絵が次々に登場。達意の文章で音楽と美術の交流が綴られていました。執筆者は予想通りあの方、そう、鶴園さんでした。20年以上前、かつて私が勤務していた美術館では何度か鶴園さんにコンサートをお願いしたことがありました。折から、ルドン展にはぜひコンサートをと思っていたものですから、早速お電話し、出演交渉をしたような次第です。

音楽との関係というと、実兄エルネストが作曲家であったこともあり、ルドンは音楽には早くから親しんでいたようです。同時代の作曲家ショーソン.ドビュッシーなどとも親交があったことが知られています。今回のコンサートではエルネストの曲を再現、また19世紀の作曲家シューマン、ショーソン.ドビュッシーに加え、シュルレアリスムの詩人瀧口修造に触発された武満徹の曲まで、ユニークなプログラムになりました。もちろん、鶴園さんのトークもあります。音楽という補助線を引くことで、ルドンの別の側面に光を当てることになるのではと期待しています。まだ席の余裕はあるようです。冬の夕暮れどき、静かな美術館でルドンに思いを馳せながら、ピアノの響きに耳を傾けてはいかがでしょう。