館長ノート

コレクション展Ⅱ、お見逃しなく。

今年の夏の猛烈な暑さもさすがに9月の声を聞くと、大分和らいできたようです。館長室の窓から眺める西大畑公園の木々もわずかに色づいてきたようにも見えます。山口晃さんの明日(9月7日)のトークも大人気。展覧会も押すな押すなというほどではありませんが、山口さんの細密な表現に見入るお客様の熱気であふれています。

さて、今回のコレクション展、「ニッポン・画はどこにある?」と題して、日本というこの風土と文化に固有の絵画とはなんなのか、考えてみようというものです。昨年から、コレクション展を、企画展と関連づけて構成してみようというところから、企画性を前面に出すようにしています。もちろん、そのことでコレクションに新たな光を当てたいということがあります。

そこで今回は山口晃展に因んでの企画。山口さんは線を強調した描写や絵巻物にあるような情景を俯瞰する手法をとったりしているのだけれど、技法的には油絵です。それとは逆に、日本画を学んだ絵描きさんが布を画面に張り付けた随分と大胆な作品をつくったりもしている。私たちはとかく、日本画は日本画の、洋画は洋画の、現代美術は現代美術の文脈で線を引いて、その線の中でしか作品に相対していないのではないのでしょうか。だったら、その線を取っ払って自由に見てみようじゃありませんかということなのです。

ガラスケースの近藤浩一路の情緒たっぷりの山水画の隣に、似たような茫洋とした淡彩の絵が掛かっているので、誰かなと思ってみると、なんと19世紀フランスの画家カリエールだったり、横山操の大画面の隣に現代美術の堀浩哉の作品が並んでいたり。ところが、それがまるで違和感なく、目からうろこの取り合わせなのです。

解説文もなかなか読ませます。作品と向き合う良いきっかけになるのではないでしょうか。後、2週間ほどで終ってしまうのですが、ぜひお見逃しなく。