阿部展也展、お見逃しなく!
6月23日(土)から開催中の阿部展也展、残すところあと約1週間で閉幕いたします。
油彩やアクリルを使った完成作はもちろん見ていただきたいですが、鉛筆による素描作品・資料など、見落としがち?な見どころをご紹介いたします。
まず、展覧会の冒頭で見逃せないのが、瀧口修造とのコラボレーションで制作された、詩画集《妖精の距離》。『印刷されたものか、ふーん…』と通り過ぎてはいけません。この作品は、現在はほとんど使われていない【コロタイプ印刷】という方法で作られました。この印刷方法は、非常に繊細な濃淡の諧調表現が可能で、どんなに拡大してもはっきりとイメージが見えます。
そのため、間近でじっと見れば見るほど、その繊細な線と、美しい陰影の描写に魅了されるはずです。アメーバのような、動き続ける生き物の一瞬をとらえたかのような不思議なかたちが、丁寧に描き出されています。ぜひ近寄ってごらんください。
第3章の中でおすすめなのは、322点の《制作メモ・スケッチ》です。ケースの中にぎっしり並べられたこれらは、完成作のために描かれたものと考えられます。
目の前の壁にかけられた油彩作品の直接の下絵となったものも、いくつか見つけることができます。そのほかにも、落書きのように自由なイメージ、個性的な表情の人、かわいい猫?やロボット??など、面白い人物像がたくさんあり、一枚一枚楽しんで見ていただけるはずです。阿部の創作の思考回路を、ちょっとだけのぞき見しているようです。
もうひとつの見どころは、テレビ画面でお見せしているインドや旧ユーゴスラヴィアの写真です。当時は、まだまだ海外旅行が一般的ではない時代。阿部は得意のカメラで、街並みや人々を写し取っています。
阿部の視線は、人々の暮らし、服装や建物など、民俗的な部分に向けられています。その中でも阿部が最も興味ひかれたのが、旧ユーゴスラヴィアの墓石彫刻。拓刷をとってまわり、研究家としても活動していました。
阿部の見たものを直接に伝える、これらの写真資料も必見です。
展覧会の随所に見どころたくさんの本展、お見逃しないようご覧ください!
最終日の8月26日(日)14時から、最後のギャラリートークも予定しております。こちらも、ぜひご参加ください。