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2月24日にロシア軍のウクライナ侵攻が始まってから、多くの命が失われています。
それに呼応して、無数の青と黄色のハートが地球上を飛び回っています。
LIFE―生命/生活とLOVE―愛/心が危機を迎え、そこに寄り添いたいという気持ちが満ちている、そんな日々を私たちは暮らしています。「LOVE & LIFE」という展覧会を、いま偶然に開催していることの重さを痛感せざるを得ません。
もともと新潟市美術館と新津美術館の所蔵作品による「LOVE & LIFE」という展覧会は、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京大会の時期にあわせて考えたものでした。東京大会の開催延期と美術館のスケジュールの都合から翌年度へ繰り越し、2022年2月26日からの開催となりました。結果的に、北京パラリンピックの時期と重なることになりました。
北京オリンピックは政治的とも見える色々な問題が表面化しましたが、近代オリンピックが政治と無縁だったことなどなかったと言えるでしょう。
そこで、古代オリンピックのことを考えてみました。専門家でも研究者でもないので、勝手気ままに想像を広げてみます。裸身での競技は国を示すものを身につけないため。オリーブの冠は、金銀財宝の争奪戦にしないため。そう考えると示唆的ではありませんか。
オリンピック憲章は、前文にある「オリンピズムの根本原則」で始まります。ここで注意してほしいのは、根本にあるのが「オリンピズム」という哲学であることです。これには教育哲学が専門のド・クーベルタン男爵の思想が反映されています。
1 オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、 バランスよく結合させる生き方の哲学である。 オリンピズムはスポーツを文化、 教育と融合させ、 生き方の創造を探求するものである。 その生き方は努力する喜び、 良い模範であることの教育的価値、 社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする。
出だしの部分、原本の英文では、「Olympism is a philosophy of life,…(オリンピズムは生の哲学である)」と高らかに始まります。続く文章の「スポーツを文化、 教育と融合させ、 生き方の創造を探求するもの」という部分も重要です。オリンピックには文化芸術のプログラムが必須であるのは、ここに根拠があります。ちなみに、かつてのオリンピックには競技の中に芸術部門があり、ド・クーベルタン男爵も1912年文学部門で金メダルを受賞しています。
さらに余談ですが、ピエール・ド・クーベルタン男爵の父親、シャルル・ルイ・ド・フレディ・クーベルタン男爵はサロンに出品するような画家だったそうです。ここにピエールを描いた絵の画像を載せておきます。
ともすると、スポーツの勝ち負けに大騒ぎするオリンピックですが、「生き方の創造」という部分に目を向けたいものです。
最後に、私が監修している新潟市の展覧会の宣伝をさせてください。新潟市美術館の市民ギャラリーでは、3月13日まで、「あふれる思い ふれる気持ち」という展覧会を開催しています。これは、市内の障がいのある方の表現活動を調査した結果をもとに、13人の作家の作品と、制作過程の動画もあわせて紹介しています。描きたいものを描き、作りたいものを作る。生きることと作ること、LOVEとLIFEが一体となったアートをご覧ください。
「ともにアートプロジェクト あふれる思い ふれる気持ち」展覧会の開催について 新潟市 (niigata.lg.jp)
シャルル・ルイ・ド・フレディ・クーベルタン男爵「若きピエール・ド・クーベルタンと姉《出発》の部分」 1869(出典:Wikipedia) これは「LOVE & LIFE」展の出品作ではありません。
「あふれる思い ふれる気持ち」会場風景