館長ノート

館長のノート

 西大畑に通い始めて早7ヶ月が過ぎました。雪が溶け、長かった冬が終わり、遅い桜が一瞬咲き誇ったかと思ったら、いまはもう新緑のさなか。日に日に緑が濃くなっていく若葉が、オリーブグリーンの外壁に照り映え、多分いまが最も美しい季節なのでしょう。

 新潟市美術館も新年度を迎え、新しいスタートを切り、最初の企画展、「ふるさと燦燦、育まれた作家たち展」も好評のうちに終了しました。同展は旧BSN美術館の所蔵品を中心としたもの。旧BSN美術館は1964年5月に開館した新潟では最初の美術館です。同館は1985年に閉館しますが、市美術館はコレクションを寄託というかたちでお預かりし、長年にわたり活用させていただいています。驚かされるのは、五泉市出身でイタリアに渡った阿部展也の縁があってのこととはいえ、1960年前後のイタリア美術の精鋭たちの作品が集中的に収蔵されていること。その先見性に改めて眼を見張るとともに、自然新潟における美術館・博物館の来し方に思いをはせることになりました。

 そんなこともあり、去る5月3日、北方文化博物館の伊藤文吉館長と富山県の南砺市立福光美術館の奥野達夫館長をお招きし、フォーラム「ミュージアム雑論-地域の美術館・博物館」を開催しました。

 北方文化博物館は戦後すぐに生まれた県内最初の博物館です。新潟はおろか日本のミュージアムの生き証人のような伊藤館長は、「館長たるもの、館長室に閉じこもっていてはいけない。外に出て来館者に積極的に声をかけるべき」とおっしゃいます。一方の奥野館長は、苦労話も交えながら、「地域のひとびとが集うサロンを心がけている」と語ります。福光はかつて版画家・棟方志功が戦時中から戦後にかけて疎開していた土地として知られていますが、同館の活動からは小規模ながら一本筋の通った美術館という印象を受けます。経験豊かなお二人の闊達なお話しで、和やかな雰囲気のトークとなりました。聴衆のみなさんの反応も上々でした。美術館が自己省察し、あるべき姿を見据えることは大切なことです。地域の叡智に耳を傾けながら、私たちも着実に歩を進めていきたいものです。