館長ノート

金子孝信展、人気じわじわと。

 

梅雨明けまでは少し間がありそうですが、金子孝信展じわじわと人気が出ています。

金子孝信、新潟市美ではかつて「夭折の画家たち」(1987)という展覧会で取り上げたことがあるので、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。

金子は大正4(1915)年、蒲原神社の宮司の三男として生まれ、昭和17(1942)年中国戦線で戦死します。わずか26歳の生涯でした。信州上田の戦没画家の美術館、無言館にも展示されています。私たちが今回個展を企画したのは、かれが悲劇の画家だからではありません。短い生涯に生みだした、モダン都市東京の息づかいを見事に捉えた作品群が、日本画家としての革新的な挑戦のありさまを示しているからです。もっと評価されてしかるべき、戦時中美術の動向のなかに適切に位置づけるべきと考えたからです。

もちろん、そうしたことが可能になったのは、潟東樋口記念美術館の中島榮一館長や山浦健夫氏による地道な先行研究のおかげであり、その成果として昨年来大量の新発見の作品群が世に現れてきたからでもあります。

この展覧会は私たちにとって、とても大きな意義を持つものです。ひとつは地域の作家を掘り起こし、評価・再発見し、さらには新潟の外に向けて発信するという私たちの目指す目標が実現されつつあるという点において。いまひとつは、地域の美術館や研究者とつながり、市美術館を外に向かって開いていくという点においてです。

私たちの意図が通じたのか、「市報にいがた」では異例の扱いで金子展を特集してくれました。先日は朝日新聞の美術記者大西若人さんが取材に来館、716日の夕刊文化欄に大きく紹介されました。戦時下のモダン文化という文脈で、東京国立近代美術館の所蔵作品展「何かが起こっているⅡ:1923 1945、そして」に展示されている短編アニメ「動物となり組」と一緒の紹介です。思いがけない方向からの光で、金子孝信の新たな意味が浮かび上がってきます。来る20日の日曜日には、14時から中島館長による作品鑑賞会も開催されます。ふるってご参加ください。