「ニイガタ・クリエーション」展、あと1週間です。
「ニイガタ・クリエーション」展、あと1週間となりました。新潟出身の3人の美術家、丸山直文、阪田清子、冨井大裕と新潟に拠点を置くダンスカンパニー、Noismによる展覧会ですが、新潟市美術館としては随分思い切ったものとなりました。
この展覧会、地域における創造活動の紹介を目的としたものです。その意味では、よくありがちな展覧会なのですが、副題に「美術館は生きている」と謳っているとおり、少しだけ変わったところがあります。美術館は静かな鑑賞の場であるべきとの考え方があります。でもわたしはむしろ、美術館はいつもいきいきと動いているものであってほしいと常々思っています。
りゅーとぴあの専属舞踊団Noismに参加を依頼したのも、そうした理由からです。ダンスや演劇は劇場で、美術は美術館でというのは、それぞれの施設に備わった機能からすると当然至極の約束事なのですが、ときにはその境界を乗り越える自由な行き来があっても良いのではないでしょうか。その甲斐あって、Noismがこれまでの公演で使用した舞台美術や衣裳、音楽などをシャッフルし、組み合わせた、言い換えれば芸術監督の金森穣さんが演出した、一種のインスタレーションが現出しました。暗闇の中で出会う椅子の集積や、照明で浮かび上がるポーズをとった衣服や、鳴り響くエディット・ピアフのシャンソンはとびきり刺激的。ダンサーの身体はそこにはないのだけれど、その不在が存在を意識させずにはおきません。そして、ときおり何人かのNoismメンバーが現れ、なにがしかの行為を繰り広げることもありました。今週もどこかでそんな機会が訪れることと期待しています。
三人の作家さんも新作を中心に出品。なにより作家こそが創造に突き動かされ、生きて動いていることを示してくれたのです。長岡出身の丸山さんは、制作の過程で生み出されたたくさんのドローイング‐しかもすべて蝶の絵です‐を休憩コーナーの青い天井にピンで留めるという大胆かつ鮮やかな展示で、展示室に一足早く春を連れてきました。新潟市出身の冨井さんは、美術館所蔵のロッソやジャコメッティらの彫刻と自作を絡ませたり、美術館の思いがけない場所に付箋でつくった作品を貼りつけたりと、挑発的な身振りで驚かせてくれます。上越出身、沖縄で制作する阪田さんは、絨毯を剥がしコンクリートをむき出しにした空間で、カーテンと多足の椅子とテーブルが織りなす、詩的な黙劇を展開しています。三人三様、個性的な創造が際立ちます。
この展覧会の評判、実はじわじわ広がっています。高名な美術評論家の方や全国の美術館の目利きの学芸員がわざわざ新潟まで足を伸ばし、じっくりと時間をかけて観てくださっていますし、先週3月19日付朝日新聞夕刊の文化欄にも大きく取り上げられました。いわく,「地元ゆかりという枠を超え、美的かつ知的に楽しめる」と。ぜひ、お見逃しなく。