館長ノート

着任のご挨拶

特任館長着任のご挨拶

前山裕司氏の後任として、4月1日に特任館長を拝命しました滝沢恭司(たきざわ きょうじ)です。

少しだけ自己紹介させていただきます。3月末日までは東京にある町田市立国際版画美術館の学芸員でした。主なる研究分野は「マヴォ」というグループを中心とした1920年代の新興美術、そして近現代の日本の版画です。関連する展覧会として「ブブノワ1886-1983」展(1995年)、「棟方志功展」(1998年)、「極東ロシアのモダニズム1918-1928」展(2002年)、「織田一磨展」(2000年)、「美術家たちの「南洋群島」」展(2008年)、「生誕100年 小野忠重展」(2009年)、「鬼才の画人 谷中安規」展(2014年)、「横尾忠則HANGA JANGLE」展(2017年)、「浮世絵モダーン」展(2005年と2018年)などを企画担当してきました。

こうした企画展の準備だけでも新潟には10数回訪れています。極東ロシア展では新潟空港とウラジオストクもしくはハバロフスクの空港間を数回往復、織田一磨展では織田が昭和初期に石版画に描き出した万代橋や古町界隈を歩き、新潟の文化をあじわい、景色を楽しんだことを思い出します。谷中安規展の際には安規ゆかりの長岡市下塩にある妙圓寺や柏崎市鯨波の龍泉寺などを訪れました。それ以外に市や県立の美術館の展覧会を見に訪れたことなどが何度かあります。

こうして記憶をたどっていくと、わたしにとって新潟はそれなりに縁がある地域なのかもしれません。とはいいましても、新潟市の美術館について知ることは少なく、もちろん新潟という土地についての知識も乏しいことは正直に申し上げておきます。まずは新潟市の美術館と美術そして地域を知るところからはじめたいと思います。それとともに、新潟市の美術館をとりまく現状と課題の把握に努め、知る限りではありますが私が勤めていた東京やその近郊の美術館の事業内容や取り組み方なども参照しつつ、スタッフと協議・協働して美術館運営を地固めし、また時代とともに動いている美術館であるよう運営に携わっていきたいと思います。

その際肝としたいことは、「新潟市美術館がめざすもの」の一つにも掲げられていますが、「生きている美術館」でいるということです。これまでの美術館の歴史と現在の活動をベースにしながら、そう受け止められる美術館であるよう、自分に、スタッフに、市民の皆さんに「美術館」のあり方を問いつつ、進化する社会に臨機応変に対応できる新鮮で柔軟性のある美術館でありたいと思います。それには特任館長の役割として、スタッフの業務を支援し、個々の能力が発揮できる環境を整えていくことが大切だと考えています。

現在、新潟市美術館は大規模修繕の真っただ中にありますが、本年夏の終わり頃にはリセットした美術館として皆さんをお迎えできる予定です。新潟市の出身で、建築家として地元市民からも敬愛されている前川國男が設計した美術館で、そして先達によって築かれた40年の歴史ある美術館で、さらに豊かな文化のある新潟という街で仕事ができることに矜持を持ち、建築とともにこれからも愛される美術館であり続けるよう力を尽くしてまいりたいと思います。

前任の前山館長と同様に、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2025年4月14日
滝沢恭司